2010年9月17日金曜日

石の論考

ここに掲げた主題の範囲は、奈良県飛鳥地方一帯に遺存し、またはもとそこの地域にあって現在は他に移されている古代の石造物についてである。巨石に加工したものは、高市郡明日香村岡字酒船の丘陵上にある酒船石、同所近くの畑にある亀石、橿原市南妙法寺町石船山にある益田岩船がある。人体像の彫刻には明日香村下平田の吉備姫王墓前にある猿石、同村橘寺境内に置かれている二面石、同村石神より出土し、長く東京博物館構内に置かれ、現在飛鳥に移してある道祖神石、須弥山像石などがある。
これらに共通した特質は、次のようになる。
①これらの石造物について古事記・日本書紀などの古典に記事がない。
②製作年代は七世紀中葉と思われる。
③石の材質が付近の古墳の石槨や石棺などに使用されている凝灰岩よりも硬い花崗岩である。
④彫刻などの技術は稚拙である。
⑤未完成のものが多い。
⑥製作目的や用途がはっきりしない。
⑦飛鳥地方に集中している。
いちおう、こうならべてみた。
もっとも、①についての例外は須弥山像石だけである。(火の路・松本清張より)

 (飛鳥資料館 図録より)

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