2012年4月1日日曜日

初音の鼓(注解)

『義経記』巻五「判官吉野山に入給ふ事」に登場し、『義経千本桜』で重要な役割を与えられた鼓。『義経記』では紫檀の胴に羊の革を張ったもの。『義経千本桜』では、桓武天皇の時代に雨乞いのため、大和の国に千年もの年功を積んで通力を得た夫婦の狐の皮を張って作られ、宮中に伝えられたことになっている。後白河法皇から義経に、「鼓を打つ」と「頼朝を討つ」という意味を掛けて授けられ、義経が頼朝の追及を受け、九州に逃げようと大物浦(だいもつのうら)(現・兵庫県尼崎市)に向かう際、静御前に初音を渡し、家来の佐藤忠信(実は初音の鼓にされた狐の子が化けたもの)に託したが、義経は暴風雨のため難破、吉野の山中に隠れる。そこへ本物の佐藤忠信が訪ねて来て、続いて静御前が狐の忠信と共に訪ねて来たことから、にせ忠信の正体が判るが、義経は親を思う狐の心を憐れみ、初音の鼓を与えたことになっている。なお、初音の鼓と称されるもの、および後出「菜摘邨来由」については、これを所蔵している家が奈良県吉野郡吉野町菜摘に現在もあり、谷崎も見に行った上で『吉野葛』を書いている。(新潮文庫 吉野葛 谷崎潤一郎)注解より

国立劇場 2011年6月歌舞伎鑑賞教室より

 人形浄瑠璃文楽名演集 義経千本桜 Vol.4NHKエンタープライズ) ゼブンネットショッピングより

 


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