2010年4月11日日曜日

バス路線

高須通子は、高畑町の裏通りから大仏前までぶらぶらと歩き、そこで自衛隊前行きのバスを待った。6時近くでもう夜の風景になっていたのだが、土産物店などのまぶしい灯りの下には修学旅行の生徒がまだ群れていた。言葉尻に強い訛りがある。土産物屋の大仏のタオルと鹿の角の箸を手に持った女生徒に聞いてみると熊本県の高校生だといった。引率の男と女の先生が軒の下から出て集合を叫んでいた。
定期バスの中は柔らかい関西訛りばかりだった。ゆっくりとした勾配の道を下りた近鉄奈良駅前と、次の高天町の停車で乗客が半分ぐらいになった。膝の上のスーツケースを座席に置いてもひろびろとしていた。
北に曲がって法華寺中町から西に折れた。これからはまっすぐな長い道である。付近に学校が多く、街灯だけが目立つ寂しい通りであった。踏切を渡ると暗い中に田畑がひろがった。地図にはこの辺が「佐保路」と出ている。
また町に出た。角を曲がってすぐが「法華寺前」の停留所だった。(火の路・松本清張より)

奈良交通バス路線図より 一部抜粋 



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