2011年9月16日金曜日

「人種」・「国民」・「民族」

 前に、「民族のアイデンティティ」という言葉を使った。──アイデンティティ=identityという言葉は、日本語にうまい訳がなく、簡単な辞書をひくと「同一」とか「本体」とかいう意味が出ているが、ここでは、「日本民族が、日本民族である所以(ゆえん)のもの」ぐらいの意味に解していただきたい。
 はじめにもちょっとふれたが、「日本民族」というのは、「日本人」と厳密に同じではない。私たちが、通常、ごく何気なく使っている「日本人」のなかには、「日本民族」や「日本国民」や、ばあいによっては「人種」の意味が──はっきりいって「日本人種」という「人種」は存在しないのだが──ごく曖昧にかさなりあって使われている。「民族」や「国民」や「人種」が、それぞれちがう概念であることはいうまでもない。
 「人種」というのは、いちおう形質的・生物学的分類概念であるが、いわゆる「黄色人種(モンゴリーデ)」「黒人種(ネグリーデ)」「白人種(オイロビーデ)」の大ざっぱな身体的・遺伝的特徴は分類できるものの、それ以上の細かい分類は、たいへんあいまいなものである。なにしろ、人類は生物学的にはひとつの「種」であって、人種間でいくらでも混血できるし、それによって中間形質もいくらも生まれるから、「民族」の概念と混同するのは、厳密に避けられねばならない。(本文より)

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