日本語のなかに秘められた、そういった「歴史」をしらべるのは、日本語そ日本以外の地域のさまざまの言語と比較し、そのちがいや類似をしらべ、日本語の「位置づけ」を見つけることからはじまる。──たとえば、ヨーロッパの言葉で、英語とドイツ語は、単語も似ていれば、文法もきわめて似ており、分布地域も近接している。そして、たんに外見的に「似ている」というだけでなく、厳密に、学問的に二つの言語の「対応」がしらべられて、ひじょうに近い「親類」であることがはっきりしている。そして、ドイツ語がドイツ語に、英語が英語に「わかれて」いった歴史的過程も──背景になった「ゲルマン民族移動」という歴史的事件もふくめて──たいへん詳細にしらべられている。さらにヨーロッパの言語は、スラブ系やギリシア、ラテン系にわたってひろくしらべられ、また記録によって古い時代までさかのぼってくらべられて、ごくわずかの例外をのぞいて、ひじょうに大きな「家族(ファミリイ)」であることがわかっている。さらに、ヨーロッパ以外の地域の言語と比較されて、ヨーロッパ語は、なんとはるか東方にはなれたインドの古い言語とも、縁戚関係にあることもわかってきた。(本文より)